某所に書きなぐった文章をそのまま再録。
本日は年の瀬も迫ったのにめっきりあたたかい異常気象シーズンにぴったりの、背筋も凍るネタでひとつみなさんのご機嫌をうかがおうかと。
この季節になると、どこからともなく某学部生からのメールが飛び込んできまして、「大学院に進学したいんですけど」「専攻は○○で、○大の○○先生のところで勉強したいなぁ」「つーか今後の人生どうしましょう」なんてご相談をお受けすることが多いのです。なにを血迷ったのか最近は平行して就職相談もちらほら。
いや、つーかこっちはただのプーなんだけど。
母校のサイトからもリンクされてないはずなのに、なんでわかるんだ俺の経歴が(汗汗・そしてソッコーでおのれの名前をググッてみる)。
でもまぁそれがいたいけな女子大生からだったりすると、したり顔でお返事も書いたりするのですが、それももうおもろしろくないので、この場を占領して、最近の愚考についてここでまとめてご披露申し上げます。ちなみにここではいわゆる専門職大学院とか社会人主体の大学院をのぞいた文系、とくに「ド文系」と揶揄されるような領域に問題を限定させていただきます。
で、まずこのふたつの最近のエントリを熟読いただきまして、
今じゃ入院じゃなくて「自殺」「殺人」といわれるまでに状況が悪化しているということがおわかりいただけたかと思います。院生のみなさん、ご気分が悪くなった場合はすみやかに手を上げてください(笑)。
この状況ってのは私が大学に入学したころからすでにわかっていたことで、というかとりわけド文系の場合は、大昔から清く正しく借金まみれであったわけで、むしろこのような脅迫まがいの、しかし厳然たる事実を突きつけられて、なお
「東北地方の両墓制について研究したいです」
とか(笑)
「漢方薬の民衆受容について興味ありです」
とかとか(苦笑)
「情報化社会における口裂け女の事例を集めたいです」
・・・(以下自己規制)
というひとしか、おそらく私のところにはメールなぞ送ってこないのでしょうから、そのような社会的バランス感覚を逸した方に、
「こんなにお金がかかるんですよ」、
「ぜったい育英会返さにゃきゃいけないんですよ」
と言ってもしかたがない、というところもあります。私はむしろその「とんちんかん」さにとほうもないエネルギーを感じます、むろん絶対的にいい意味で。
しかしいずれにせよ、大きな視点で考えれば、今後は公立私立の区別なく、大学という場所は激変にさらされる(現にさらされている)でしょうし、無責任な役人連中の極悪行政のあおりをモロにうけるでしょう。
ただ、それはシャバの世界でもかわらぬこと。
だんだんと雇用は回復してきているとはいえ、産業構造の変化によって新卒がそのまま契約やアルバイトに流れていくという構図はいましばらく続きそうです。実際私の友人のうち、決して少なくない数の人びとが、大学卒業から3年経ったいまでも(正社員への意志と能力と実績があるにもかかわらず)契約・アルバイトです。
たとえ正社員になっても、社員育成の余力がない昨今の企業では、十分な教育を受けないままに過度な責任を追わされたり、当然のごとくサービス残業をこなしたり、でもボーナスは年々目減りしていき、ということで、病気で退社したり転職を希望するひとが多いです。
ちなみに私はやたら女子アナだけは輩出する関東の三流私立大学出身。ただ(慶應はいざしらず)早稲田MARCHレベルは似た状況であろうかと思われます。
まさに、行くも地獄、退くも地獄。
私は世代論で物事を論じるほど単純な人間ではないと自認していますが、それでも90年代後半以降大学を卒業した人間がおかれた状況というのは過酷というものでしょう。「LEON」や「NIKITA」を読んで金にまかせて若い青少年婦女子をたぶらかしたり、ヨン様を涙ながらに追い回す30代後半〜50代をみると、フェザーでシュシュシュッと三枚下ろしにしてしまいたくなりますが、いかんせん連中は金を持っているし、そのぶん税金もしっかり払っていただいているので、文句は申せません。
まとめます。いささか強引に。
大人のみなさまへ
どうせビンボーなままで20代をやりすごさねばならないのなら、金払ってでも、「殺人」と言われようともモラトリアムが欲しいのだという院生/院進学希望者/自殺志願者のメンタリティもわかってほしいです。がんばってアルバイトしますから勘弁してください。
そのメンタリティ抜きで、ちょっとした試算で「これだけお金がかかりますよ」という「大人」の説教をしても、少なくとも「とんちんかん」な若者には通じないでしょうし、むしろ若者はそれらをすべて理解したうえで、大学院へとやってくるでしょう。ニートや負け犬がそうであるように、「おれってだめなんです勉強してないんです」的自虐的に。
大学の構造的・制度的な改革は緊急かつ最大の懸案ですが、それはとりあえず食いぶちが確保されているみなさんのサービス残業でやっていただくとして。
院進学希望者のみなさまへ
ということなもんですから諸般の事情をご理解いただいたうえで、人生棒に振る覚悟しといてください。それと「大学の先生にはなれません」ということをどうぞお忘れなきよう。
追伸
もうちょっと優しいご説明はできなかったものかと反省しています。