「高僧と袈裟」展に行ってきた

inuimon2010-10-27

京都国立博物館で開催中の「高僧と袈裟」展に行ってきました。


「高僧と袈裟」展
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tokubetsu/101009/tokubetsu.html


はい。予想されたとおり仏教(学)関係者と染織史関係者以外は完全においてきぼりの超マニアックな展示でありました。日ごろはアホみたいにごったがえす京博のまぁ空いていること! 

かくいう私はみなさんご存じww東福寺所蔵袈裟が目当てでしたが、袈裟以外の展示でも「一遍聖絵」や「法然上人絵伝」、龍安寺開山頂相などなかなかでありました。めずらしく図録まで買いました。

関係者の方ならおわかりだと思いますが、袈裟や法衣というのは法階や儀式の内容によって厳密な区別があり、「この儀式のときはこの袈裟」「あんたはこのくらいエラい坊さんだからこの衣」というのに日夜私も振り回されておるわけですが、それらの袈裟法衣はほとんどが今でも伝統的なオートクチュール@京都であります(化繊製の日常衣などはプレタポルテですけど)。

おシャカさんは糞掃衣、つまり道ばたに落ちてるボロ布を継ぎ合わせて着ておけばよいじゃん質素でいいじゃん!だったのに、中国を経て平安時代末期ぐらいに日本に来たころには、特別で手間のかかるシルク織りや金の糸をふんだんに使った豪華なものになってました。

とまぁこう書けばたんに堕落した仏教の象徴みたいな話で、そう言われればそうなんですが、この展示でおもしろいのは本場パリのオートクチュールも顔負けのこだわりぶりです。布の文様や織り方、糸の種類、色、サイズのチョー細かいところにまで昔の高僧はめちゃくちゃこだわったんです。

さらに袈裟には「ビンテージ」というジャンルがありまして(笑)昔のエラい坊さんが身につけた袈裟にはプレミアがついて価値が高騰するんです。豪華絢爛な現代の袈裟よりもかつて高僧がまとった質素な麻袈裟のほうが価値が高い。でも実はいっけん質素にみえるその麻袈裟は染料にめっちゃこだわってて(これは道元禅師のことなんだけど、私の見立てでは道元さんというひとは今でいうトム・フォードみたいなセンスなのではないかと。オトコは何か何でもクラシカルなスーツ、というか)。

求道の精神と衣装へのこだわりが共存するこの感じって、世俗の価値観からみるとやっぱ異様でちょっと狂ってるんだけど、宗教の非日常な感じを端的に見せてくれる気がします。むろん宗教が特別だということではなくてアートなんかにも共通する部分ではあるけど。