いきなり「萌の朱雀」というデキの悪い映画のことを思い出したのだが

 
 この映画、たしかカンヌかベルリンかのグランプリを獲ってるのだが、そんなことはどーでもよくて、この映画は奈良のとんでもない山奥の村に鉄道がやってくるって話があったんだけど、それが頓挫して、鉄道開通に一縷の望みを賭けていた陰鬱なおじさんが絶望して自殺しちゃって、残された家族が散り散りバラバラになって悲しいねという物語で、ようするに母なる共同体の崩壊を淡々と描いている。
 鉄道ごときで自殺しちゃうってちょっと極端だねって感じもしないでないが、田舎者にとって鉄道や道路があるってことは、外の世界/都会とつながっているって感覚を持ち続けるためにとっても重要なことなのです。とくにおもしろいのは、外の世界と繋がっていたい、ここにとりのこされたくないというこの強迫観念が、村会議員とか役場の偉いさんとかに代表されるような、地域社会の諸問題について最前線で格闘する中年男性に多く見受けられるからおもろい。

 この田舎中年男子の強迫観念は、ナメてかかると痛い目にあうってぐらいすごいものだ。いかんせん連中は地域社会のことについて、まじめに本気に自殺しちゃうほど悩み考えている。昨今の行政改革を機に、財政が苦しくなった総務省が「公共事業に依存しない地域のあり方を」などとイチャモンつけて交付金をバンバン削っていますが、おそらくそんなもんでは全然へこたれないくらい強烈な強迫が田舎中年男子を襲っているのである。まぁたいへん。